韓国

日本の影響を受けつつも、独自の「屋台(ポジャンマチャ)文化」と結びつき、今や冬の風物詩として国民食レベルに進化しています。特に港町である釜山(プサン)は、上質なねりものの産地として有名です。

オムク(어묵)/オデン

【メイン原料】: スケトウダラ、タチウオなどの近海白身魚

【特徴】: 日本の「おでん」が語源ですが、韓国では料理名ではなく「薄く平べったいさつま揚げ」そのものを指すことが多いです。これをじゃばら状に折りたたんで長い竹串に刺し、カニや大根、昆布で出汁をとった熱々のスープで煮込みます。屋台では紙コップにこのスープを注いでもらい、オムクをかじりながらスープを飲むのが定番スタイル。霧吹きで醤油をかけたり、トッポギの辛いソース(コチュジャン)を絡めて食べるのも人気です。

ハッパ(핫바)

【メイン原料】: 白身魚のすり身(+エゴマの葉、ソーセージ、チーズ、カニカマなど)

【特徴】: すり身を太い棒状(バー状)に成形し、注文が入ってから屋台の高温の油でキツネ色に揚げてくれるファストフード的なねりものです。中に丸ごとフランクフルトが入っていたり、とろけるチーズが仕込まれていたりと、若者向けのジャンクでボリューム満点なアレンジが特徴。ケチャップやハニーマスタードをたっぷりかけて、高速道路のサービスエリアや食べ歩きストリートで楽しまれています。

台湾

Q弾(キューダン)」と呼ばれる、タピオカのようなモチモチ・プリプリとした強い弾力を極端に好む台湾の食文化が、ねりものにも色濃く反映されています。夜市(ナイトマーケット)には絶対に欠かせない存在です。

甜不辣(テンプラ / Tianbu la)

【メイン原料】: サメやカジキなどの白身魚

【特徴】: 日本統治時代に伝わった「天ぷら(さつま揚げ)」が語源ですが、台湾独自の進化を遂げています。一口サイズのさつま揚げを、大根や豚の血のケーキ(豬血糕)と一緒にダシで煮込み、とろみのある特製の甘辛い茶色いソース(甜辣醬)をたっぷりかけて提供されます。食べ終わった後のお椀に、鍋のダシ汁を注いでもらってスープとして飲み干すのが台湾のツウな楽しみ方です。

淡水魚丸(タンスイユーワン)

【メイン原料】: サメのすり身(+中に豚肉のミンチ、ニンニク)

【特徴】: 台北から地下鉄で行ける美しい港町・淡水(タンスイ)の絶対的な名物。少し細長いアーモンドのような形をしたサメのすり身団子で、驚くほどプリプリとした強い弾力があります。最大の特徴は「中に味付けされた豚肉のそぼろ」が包み込まれていること。あっさりとしたセロリや白コショウの効いた透明なスープと一緒に噛み締めると、中から濃厚な豚の肉汁がジュワッと溢れ出す、計算し尽くされた逸品です。

花枝丸(ホアジーワン)

【メイン原料】: イカ(花枝)のすり身

【特徴】: 魚ではなく、新鮮なイカのすり身で作った団子です。すり身だけでなく、ブツ切りにしたイカの身がゴロゴロと練り込まれているため、プリッとしたすり身の食感と、イカのコリコリとした歯ごたえを同時に楽しめます。串に刺して外側がカリッとするまでキツネ色に揚げ、台湾特有のスパイス「椒鹽(白コショウと塩を混ぜたもの)」をまぶして食べるのが夜市の定番です。

中国

国土が広大で歴史が長いため、特に海に面した沿岸部(福建省や広東省など)において、宮廷料理や高度な宴会料理の技法を取り入れた、非常に複雑で多様なねりもの技術が発達しています。

福州魚丸(フージョウユーワン)

【メイン原料】: ウナギ、サメ、タラなどの白身魚(+豚肉、醤油、ごま油)

【特徴】: 福建省福州市の伝統料理で、中国の非物質文化遺産(無形文化財)にも登録されている格式高い名物です。「魚丸がないと宴会にならない」と言われるほど地元で愛されています。新鮮な魚の身を徹底的に叩いて空気を含ませることで、マシュマロのようにフワフワで滑らかな白いすり身を作り上げます。その中心には醤油ベースで濃いめに味付けされた豚肉の餡が入っており、魚の淡白さと肉の濃厚な脂が見事なコントラストを生み出します。

魚麺(ユーミェン )

【地域】: 湖北省(雲夢魚麺)、浙江省(温州魚餅・魚麺)

【特徴】: 中国の「魚麺」は、単なる魚のすり身ではなく、ごく少量の小麦粉で魚の身を練り上げ、麺の形に加工した「究極のねりもの」です。
特に湖北省雲夢(うんぼう)の魚麺は、清代に宮廷への献上品とされた歴史を持ちます。新鮮な淡水魚の身をすり潰し、でんぷんを加えて薄く伸ばして蒸し、それを紙のように細く刻んで乾燥させます。食べる時はスープに入れて戻しますが、小麦粉の麺にはない「魚の濃縮された旨味」と「独特のコシ(韌性)」があり、一度食べたら忘れられない食感です。

魚腐(ユーフー)

【地域】: 広東省(順徳、羅定)

【特徴】: 広東料理の真髄とも言えるねりものです。草魚のすり身に大量の卵白を加え、空気を抱き込むように練り上げた後、低温の油でゆっくりと揚げます。

仕上がりは、まるで「お麩」や「揚げ豆腐」のように、中が気泡だらけのスポンジ状になります。これ自体に強い味はありませんが、火鍋やスープに入れると、そのスポンジ状の組織が高級な出汁を限界まで吸い込み、口の中で旨味が爆発します。

魚餅(ユービン)

【地域】: 浙江省(温州)、広東省(順徳)

【特徴】: 日本の「板かまぼこ」に最も形が近いですが、製法はよりワイルドです。
温州魚餅は、豆腐と魚の身を混ぜて長方形に成形し、蒸した後に表面を軽く焼いたり揚げたりします。冷めても弾力が強く、薄くスライスしておつまみにしたり、炒め物の具材にするなど、現地の家庭料理には欠かせない万能選手です。

魚巻(ユージュアン)

【地域】: 福建省(恵安)

【特徴】: 福建省の恵安(けいあん)地方に伝わる伝統的なねりものです。

魚のすり身を、豚の網脂や薄い皮で「巻物」のように包み込んで蒸し上げます。お祝いの席や宴会には絶対に欠かせない一品で、丸い「魚丸」とは異なり、長い「巻物」の形をすることで「長久(長く続くこと)」を願う縁起物としての意味も込められています。

香港・マカオ

かつて漁村だった歴史を持つ香港と、ポルトガル文化が息づくマカオは、共に「魚のすり身」を魔法のように使いこなす地域です。街角の屋台から高級レストランまで、ねりものは市民の生活に完全に溶け込んでいます。

咖喱魚蛋(カリーユーダン / Curry Fish Balls)

【メイン原料】: 雑魚、エソなどのすり身(+でんぷん)

【特徴】: 香港の「ストリートフードの象徴」です。1950年代に、安価な魚のすり身を美味しく食べるためにカレー粉で味付けしたのが始まりと言われています。

「黄金魚蛋」とも呼ばれるこの団子は、一般的なかまぼこよりも弾力が強く、噛むと「キュッキュッ」と音がするような独特の歯ごたえがあります。スパイシーで甘辛いカレーソースにどっぷりと浸かった串刺しの魚蛋は、香港人のアイデンティティそのものです。

鯪魚球(レンユーカウ / Dace Fish Balls)

【メイン原料】: ケンヒー(鯪魚という淡水魚)(+陳皮、ネギ、コリアンダー)

【特徴】: 職人の技が光る、これぞ香港・広東の伝統ねりものです。鯪魚は旨味が強い反面、小骨が非常に多い魚ですが、これを骨ごと細かく叩き潰して滑らかなすり身にします。
最大の特徴は、乾燥させたみかんの皮「陳皮(チンピ)」を練り込むこと。これにより、淡水魚の泥臭さを完全に消し去り、高貴で爽やかな香りを引き出します。お粥の具材として煮込むほか、レタスと一緒にスープにする「生菜鯪魚球湯」は、香港の家庭の味として欠かせません。

煎醸三宝(ジンニョンサンボウ / Fried Three Stuffed Treasures)

【メイン原料】: 鯪魚(ケンヒー)のすり身

【特徴】: 香港の屋台で必ず見かける「野菜+ねりもの」のハイブリッド料理です。ナス、ピーマン、豆腐などの切り口に、魚のすり身をたっぷりと詰め込み、すり身側を下にして鉄板で香ばしく焼き上げます。
魚の旨味と野菜の甘みが一体となり、甘辛い醤油ダレをかけて食べます。家庭料理としても人気で、余った魚のすり身を美味しく食べる知恵が詰まった逸品です。

馬介休球(マカイヒャウカウ / Pasteis de Bacalhau)※マカオ限定

【メイン原料】: バカリャウ(塩漬け干しダラ)(+ジャガイモ、卵、パセリ)

【特徴】: マカオが誇る「ポルトガル由来」のねりものです。厳密には日本の練り物とは製法が異なりますが、魚の身をほぐし、マッシュポテトと混ぜてラグビーボール型に成形して揚げた「魚のすり身揚げ」の一種です。

外はカリッと、中は干しダラ特有の強い旨味とジャガイモのホクホク感が一体となっており、ポルトガルの伝統とマカオの風土が融合した、世界でもここでしか味わえない「洋風ねりもの」の傑作です。