カザフスタン
世界最大の湖であるカスピ海に面する西部や、巨大なバルハシ湖周辺では、古くからチョウザメやスダク(パイクパーチという白身魚)などを獲る独自の魚食文化が根付いています。

ルィブヌィエ・カトレット(Rybnye Kotlety / 淡水魚のロシア風カツレツ)
【メイン原料】: スダク(パイクパーチ)、鯉、カワカマスなどの淡水魚(+牛乳に浸したパン、玉ねぎ、卵)
【特徴】: 旧ソ連時代にカザフスタン全土の食堂や家庭に定着した、「魚のハンバーグ(さつま揚げ)」です。川魚は小骨が多いため、骨ごと徹底的にミンチ状に挽いてしまうのが現地の知恵です。そして最大のポイントは、つなぎとして「牛乳でたっぷりとふやかしたパン」をすり身に練り込むこと。これにより、パサパサしがちな白身魚が驚くほどフワフワでジューシーな食感に変わります。外側に軽くパン粉や小麦粉をまぶして多めの油で揚げ焼きにし、サワークリーム(スメタナ)やフレッシュなディルをたっぷり添えて食べるのが定番スタイルです。
ウズベキスタン
「二重内陸国(海に出るために国境を2回越える必要がある国)」であるウズベキスタンですが、アムダリヤ川やシルダリヤ川といった巨大な水郷地帯周辺には魚料理専門店が立ち並び、魚を愛する人々で賑わっています。

バゥルク・ルーラケバブ(Balyk Lulya Kebab / 魚のミンチ串焼き)
【メイン原料】: サザン(鯉の仲間)やナマズなどの川魚のすり身(+コリアンダー、クミン、玉ねぎ、羊の脂)
【特徴】: 中東から中央アジアにかけて広く食べられている、肉のミンチを剣のような平たい金串に握りつけて焼く「ルーラ・ケバブ」を、川魚のすり身にアレンジした料理です。淡水魚特有の泥臭さを完全に消し去るために、大量の玉ねぎのすりおろしと、クミンやコリアンダーシードなどのスパイスをしっかりと練り込みます。強い粘り気が出るまで叩いた魚のすり身を串に巻きつけ、炭火で香ばしく焼き上げます。酸味のあるザクロのソースや、生の玉ねぎスライスと一緒に食べるのがウズベク流の絶品な味わい方です。
ロシア
広大な国土を持つロシアは、北極海から極東の海、そして巨大な淡水系まで、豊かな水資源に恵まれています。ロシア正教には「肉を食べてはいけない精進期間(斎)」が1年の約半分もあるため、古くから肉の代わりに魚をミンチにして「肉料理(ハンバーグや餃子)のように見立てて食べる」という、独自のねりもの文化が発達しました。

ルィブヌィエ・カトレット(Rybnye Kotlety / ロシア風フィッシュ・カツレツ)
【メイン原料】: タラ、カワカマス(パイク)、カラフトマスなど(+牛乳に浸した白パン、玉ねぎ、卵、ディル)
【特徴】: ロシア全土の家庭食堂(スタローヴァヤ)で見かける、ロシア風のフィッシュハンバーグ(さつま揚げ)です。ミンチにした魚肉に、牛乳でたっぷりとふやかした白パン(バトン)を混ぜ込むのがロシア流の絶対ルール。これにより、タラなどの淡白な魚でも、驚くほどふっくらとジューシーな食感に仕上がります。表面にパン粉をまぶして多めのバターやひまわり油でこんがりと揚げ焼きにし、マッシュポテトとフレッシュなディル、そしてたっぷりのサワークリーム(スメタナ)を添えて食べます。

ルィブヌィエ・ペリメニ(Rybnye Pelmeni / シベリア・極東風の魚水餃子)
【メイン原料】: 鮭(サケ)、チョウザメ、シロマスなどのすり身(+玉ねぎ、ニンニク、黒コショウ、豚の脂)
【特徴】: シベリアや極東ウラジオストクなど、寒冷で魚が豊富な地域ならではの「ねりもの包み料理」です。ペリメニといえば通常は肉の水餃子ですが、この地域では贅沢に鮭や高級白身魚を叩いてミンチにし、小麦粉の皮で包みます。魚のすり身だけだとパサつくため、隠し味として少量の豚の脂(サーロ)やバターを練り込むのが、極寒の地ならではのカロリーと旨味の補給法。凍るような冬の日に、熱々の澄んだブイヨンに浮かべた魚のペリメニをと食べるのは、シベリアの贅沢とされています。