カナダ

広大な海岸線を持ち、特に大西洋岸の東部地域(ダウンイースト)において、伝統的な保存食としての魚肉加工文化が色濃く残っています。

ダウンイースト・フィッシュケーキ(Down East Fish Cakes)

【メイン原料】: 塩ダラ(バカリャウ)、マッシュポテト、タマネギ、バターなど

【特徴】: カナダ大西洋岸(ニューファンドランド島やノバスコシア州)や米国北東部に古くから伝わる家庭料理です 。冷蔵技術がなかった時代に重宝された塩ダラを水に長時間浸して塩抜きし、ほぐした魚肉とマッシュポテトを混ぜて小判型のパティにし、バターや油で黄金色になるまでこんがりと焼き上げます 。外はカリッと、中はホクホクとした食感で、朝食やメインディッシュとして親しまれています 。

アメリカ合衆国

近代的なすり身産業の世界的なハブであると同時に、ヨーロッパ移民の保存食文化や、1970年代以降の日本技術の導入によって独自の進化を遂げた魚肉加工の歴史を持っています。

オジブワ・フィッシュケーキ(Ojibwe Fish Cakes)

【メイン原料】: マス、パーチ、サケなどの白身魚、ワイルドライス粉(またはクラッカー粉、コーンミール)、卵

【特徴】: 五大湖周辺に住むネイティブ・アメリカン(オジブワ族など)に伝わる伝統的なねりもの料理です 。加熱してほぐした魚肉を、つなぎとなる粉類や卵と混ぜ合わせて団子状にし、かつては熊の脂などを使って焚き火の石板の上で焼かれていました 。日本のさつま揚げやつくねの原型とも言える、素朴で力強い味わいが特徴です 。

カニ風味かまぼこ (Imitation Crab)

【メイン原料】: アラスカポロック(スケトウダラ)のすり身、デンプン、卵白、カニ香料など

【特徴】: 1970年代に日本で発明された技術がアメリカに渡り、1980年代のアメリカでの寿司ブーム(カリフォルニアロールなど)を機に爆発的に普及したカニの模造品です。白身魚を水洗いして精製したペースト(Surimi)を加熱・成形したもので、日本の「かまぼこ」と本質的に同じ滑らかで弾力のある食感を持ちます。現在では寿司だけでなく、サラダやサンドイッチ、シーフードディップの具材としても日常的に消費されています。

カリブ諸国(バルバトス・ジャマイカ・トリニダード・トバゴ)

大西洋奴隷貿易の時代に北米から持ち込まれた「安価なタンパク源としての塩ダラ」が、過酷な歴史を経て独自のソウルフードへと昇華した地域です。

バジャン・フィッシュケーキ / スタンプ・アンド・ゴー / アクラ(Bajan Fish Cakes / Stamp and Go / Accra)

【メイン原料】: 塩ダラ、小麦粉、ベーキングパウダー(またはイースト)、タマネギ、タイム、スコッチボネット(猛烈に辛い唐辛子)

【特徴】: 島によって名前や製法が少しずつ異なります。バルバドスでは「バジャン・フィッシュケーキ」と呼ばれ、生地に少量のイーストを加えて丸くふっくらと揚げ、「ソルトブレッド」というパンに挟んで食べるのが人気です 。ジャマイカでは「スタンプ・アンド・ゴー」と呼ばれ、平たくカリッと揚げられます。いずれも塩ダラをほぐしてスパイスの効いた小麦粉のバッター液に練り込み、たっぷりの油で揚げる、カリブ海を代表するスパイシーなおつまみ・朝食です。

パナマ・中米諸国

カリブ海と太平洋を結ぶ中米地域では、アフロ・アンティリアン(アフリカ系カリブ海人)の伝統を受け継ぐ、スパイスの効いた揚げねりものが国民的な軽食として愛されています。

バトレヒータス・デ・バカラオ(Torrejitas de Bacalao / パナマ風塩ダラのフリッター)

【メイン原料】: 塩ダラ、小麦粉、ベーキングパウダー、タマネギ、クラントロ(ノコギリコリアンダー)、アヒ・チョンボ(ハバネロ系の唐辛子)、カレー粉

【特徴】: 塩抜きしてほぐしたタラに、小麦粉と香り高いクラントロ、ピリッと辛いアヒ・チョンボ、そして色と風味付けのカレー粉を混ぜた生地を、油でカリッと揚げた一口サイズのフリッターです。外はサクサク、中はふっくらとしており、パナマの屋台や食堂で朝食やおやつとして非常に人気があります。アフリカ系の移民がもたらした食文化が地元の食材と融合して生まれた、歴史の詰まった一品です。